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面影草紙



いまだからこそ、寅さんに酔いしれる

大阪に滞在中
宿の部屋にいるときはずっと映画を観ていた。
ぼくがいつも利用している安宿には
ビデオレンタルサービスがあり、いろんな映画を無料で借りることができる。

そこで久しぶりに『男はつらいよ』シリーズを二作品観た。
一本目は『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』
二本目は『男はつらいよ 花も嵐も寅次郎』

シリーズ11作目にあたる『寅次郎 忘れな草』は
浅丘ルリ子演じるリリィが初登場した作品だ。
『男はつらいよ』シリーズのなかでも傑作といわれている。
この作品、名シーン、名セリフが非常に多い。
ドサまわりの歌手をしているリリィと寅次郎が初めて言葉を交わすシーン。
寅次郎が机のうえにバックやらレコードやらを置いて商売をしているところに
リリィがふらっとやってきて言う。
「さっぱり売れないじゃないか」
寅、リリィの言葉を受けて笑いながら
「お互いさまだろ」
このシーン、このセリフだけで二人がどんな仕事をしていて
同業者に対する優しさみたいなものを感じる。
とてもすばらしいシーンだ。
それから二人はなんとなく一緒に歩き始めて
「自分たちはあぶくみたいなもの」とリリィが言うと
「それも上等なあぶくじゃねぇなぁ。風呂のなかでした屁みたいなもので・・・」と寅が言う。
二人の人生観が一致していることがわかる。

ほかにすばらしいセリフがたくさんあるが
リリィを演じた浅丘ルリ子の表情の素晴らしさも見逃せない。
寅さんが寅屋の面々にいままでの恋の遍歴を語っているときに
リリィがみせる寂しそうな表情。
酔っ払って寅屋にやってきたリリィが寅さんと口論になり
寅さんの手を振りほどいて出て行くリリィの口惜しそうな、やりきれない表情。
それから寅さんと一緒にいるときのとても幸せそうなリリィの表情。
リリィの感情豊かなキャラクターがより一層にひきたっている。

二本目に見たのは『花も嵐も寅次郎』
沢田研二と田中裕子が出演。
寅次郎はジュリー演じる三郎青年の恋の指南役となっている。
ここでは寅さんは完全に脇役。
動物園のチンパンジーの飼育係をしている三郎と
デパート勤めしている蛍子の恋の行方がストーリーの中心になっている。
まったく違う環境にいる彼らだが、共通しているのは「恋に不器用」なところ。
「恋に不器用」というフレーズは氾濫しているが
この二人の不器用さには好感がもてる。
とくに三郎青年はせっかくのデートをしても
チンパンジーの話ばかりしていて蛍子は困惑してしまう。
そのことを寅さんに相談すると、寅は言う。
「会うまでは、あんなことを話そう、こんなことを話そう、といろいろと考えるんだ。
でも、実際に会うとそんなことは全部忘れちゃうんだよ」
というようなことを言う。
若い二人の恋の行方を見守っている寅さんだが
ラストシーン、やっぱり寅さんが映画を締める。
三郎青年と蛍子が結婚するとさくらから聞いた寅さんは
さくらに言う
「俺なんかが心配しなくても、うまくいってたんだな・・・・
やっぱり二枚目はいいなぁ。ちょっぴり妬けるぜ」
出て行く寅さんを見つめるさくらの表情もいい。


『男はつらいよ』の監督山田洋次は、素晴らしい監督だと思っている。
正当な評価がされにくい監督かもしれないが
ハナ肇とコンビを組んだ『馬鹿が戦車でやってくる』や『懐かしい風来坊』など
松竹喜劇はやっぱり面白い。

『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』はお勧めです
by beetle-kids76 | 2005-09-21 20:11 | 映画
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面影@第0試合 あなたの心に逆十字

by beetle-kids76
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